2025年9月19日に開催された日銀の金融政策決定会合で一躍話題になったETF(上場投資信託)。今回はこのETFについて書きます。ETFは、個別株投資よりも手軽に始められ、リスクを分散しながら効率的に資産形成ができる優れた金融商品です。この記事では、ETFの基本から具体的な活用法、さらにはETFの売買が市場に与える影響まで書いていきます。
ETFとは?基本的な仕組みをわかりやすく解説
ETFとは、Exchange Traded Fund(上場投資信託)の略称で、その名の通り、証券取引所に上場している投資信託です。投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。ETFは、日経平均株価やTOPIXといった特定の株価指数に連動するように運用されており、その指数に含まれる複数の銘柄にまとめて投資できるのが特徴です。
通常の投資信託は、1日に1回算出される基準価額で取引されますが、ETFは株式と同じように市場が開いている間であれば、いつでもリアルタイムで売買が可能です。個別株のように、特定の会社の株を選ぶ手間が省けるため、手軽に分散投資を始めたい方にとって非常に便利なツールです。
ETFのメリット・デメリット
どんな投資商品にも、良い点と注意すべき点があります。ETFの主なメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
- 少額から分散投資が可能:
ETF1口を購入するだけで、そのETFが連動する株価指数に含まれる複数の銘柄にまとめて投資ができます。例えば、日経平均に連動するETFを1口買うだけで、日本の主要企業225社に投資するのと同じ効果が得られます。これにより、1つの会社の株価変動によるリスクを抑えることができます。 - リアルタイムで取引ができる:
株式と同様に、市場が開いている時間であれば、いつでも自分の好きなタイミングで売買できます。相場の動きを見ながら取引したい方には大きなメリットです。 - 運用コストが安い:
インデックス型ETFは、特定の指数に連動するように機械的に運用されるため、ファンドマネージャーの人件費などが抑えられ、信託報酬(運用コスト)が比較的安価な傾向にあります。
デメリット
- 投資対象によっては分散効果が限定的:
特定の業種やテーマに特化したETFの場合、銘柄が分散されていても、その業種全体が不調になった場合には、大きな損失を被る可能性があります。 - 価格が連動する指標から乖離する可能性:
ETFの価格は、連動を目指す指数と完全に一致するわけではありません。運用コストやETFの需給バランスによって、わずかに乖離(トラッキングエラー)が生じることがあります。 - 自動積立ができない場合がある:
一部の証券会社ではETFの自動積立サービスを提供していますが、個別株と同じように手動で買い付けを行う必要がある場合が多いです。
どんなETFがあるの?代表的な種類と選び方
ETFは、投資対象によって様々な種類があります。代表的なものをいくつかご紹介します。
- 国内株式ETF、海外株式ETF:
TOPIXやS&P500など、国内外の株式指数に連動するETFです。株式市場全体に投資したい場合に適しています。 - 債券ETF:
国債や社債などの債券に投資するETFです。株式と比べてリスクが低く、安定した収益を目指す場合に有効です。 - 不動産ETF(REIT ETF):
商業施設やオフィスビルなどの不動産に投資するETFです。賃料収入などを得られ、比較的高い配当利回りが期待できます。 - コモディティETF:
金や原油といった商品(コモディティ)に投資するETFです。インフレヘッジやポートフォリオの分散効果を狙う場合に活用されます。
どのETFを選ぶかは、あなたの投資目的やリスク許容度によって変わります。まずは、自分が何を目標に投資するのかを明確にし、その目標に合ったETFを選びましょう。
ETFの売買が株価に与える影響
ETFの売買は、市場全体の株価に大きな影響を与えることがあります。
ETFが売られると株価は下がる?
はい、ETFが大量に売却されると、それに組み込まれている個別銘柄の株価も下がる傾向にあります。ETFは、日経平均株価やTOPIXといった株価指数に連動するように、特定の銘柄を一定の比率で保有しています。そのため、ETFが売られると、そのETFが保有している個々の株式も売られることになり、市場全体の需給が悪化します。特に、特定の銘柄へのETFの買いが集中している場合は、その銘柄の株価への影響が顕著になります。
日銀のETF売却の発表が市場に与えた影響
2025年9月19日、日本銀行が保有するETFの市場での売却を決定したことが発表されました。この発表は、日本の株式市場に一時的な動揺をもたらし、日経平均株価は一時的に大幅な下落となりました。市場が動揺した主な理由は以下の通りです。
- 需給の悪化懸念:
日銀が保有するETFは、日本株全体の時価総額の約7%に相当するとも言われており、その大量のETFが市場に放出されることで、株価の下落を招くのではないかという懸念が生じました。 - 不確実性の増大:
日銀がどのようなペースで、どの銘柄から売却していくかという詳細が不透明であったため、市場参加者の間で警戒感が強まりました。
しかし、日銀は売却ペースについて「簿価ベースで年間3300億円程度」と段階的に行う方針を示し、市場の状況に応じて調整・停止する可能性も示唆しました。これにより、株式市場全体に与える影響は限定的と見る向きも多く、発表後、株価は下げ幅を縮小しました。これは、企業の自社株買いが活発化していることや、長期的に見て経済全体のファンダメンタルズが強いという見方も影響しています。
ETFを賢く活用する具体的な投資戦略
ETFをどのように活用すれば、効率的に資産を増やせるのでしょうか。
- 長期投資:ドルコスト平均法を活用した積立投資:
毎月一定額を定期的に購入し続けることで、価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことができます。これにより、高値掴みのリスクを避け、長期的に安定した平均購入単価で投資ができます。 - 短期投資:テーマ型ETFを活用したトレンドに乗る方法:
半導体やAI、クリーンエネルギーといった、今後の成長が期待される特定のテーマに特化したETFに投資し、短期的なトレンドに乗る戦略です。 - 複数のETFを組み合わせたポートフォリオ構築:
株式ETF、債券ETF、コモディティETFなどをバランスよく組み合わせることで、リスクをさらに分散させ、より安定した運用を目指すことができます。
ETFに関するQ&A
- Q1:NISAやiDeCoでもETFは買えますか?
- はい、NISA(少額投資非課税制度)ではETFを非課税で売買できます。ただし、iDeCo(個人型確定拠出年金)では、原則として投資信託が対象となり、ETFは選べません。
- Q2:どの証券会社でETFは買えますか?
- 国内の主要なネット証券や総合証券のほとんどでETFの取り扱いがあります。手数料や取り扱い銘柄を比較して選ぶと良いでしょう。
- Q3:ETFとインデックスファンド、どちらがいいですか?
- どちらも特定の指数に連動する投資商品ですが、リアルタイムで売買したいならETF、自動積立で手間なく投資したいならインデックスファンドが向いています。運用コストや利便性を考慮して選びましょう。
- Q4:初心者におすすめのETFを教えてください。
- まずは、TOPIXやS&P500といった、市場全体に幅広く投資できるインデックス型のETFから始めるのがおすすめです。
まとめ
ETFは、初心者でも手軽に始められる優れた投資商品です。個別株を選ぶのが難しいと感じる方でも、ETFを活用することで、リスクを抑えつつ効率的に資産形成を目指すことができます。
ETFへの理解を深め、自身の投資目的やリスク許容度に合わせてETFを選ぶことが、成功への第一歩です。この記事で紹介した内容を参考に、あなたもETF投資を始めてみましょう!
ご自身の投資スタイルに合ったETFを見つけることが、長期的な資産形成の鍵となります。まずは少額から、ETF投資を体験してみてはいかがでしょうか?
